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ある厚生年金基金の悲劇

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ある厚生年金基金の悲劇
「誰のためにもならない金を払い続けなければならない。」と元理事長は語り始めた。
 大阪近郊の厚生年金基金で、昨年、大きな不足金の負担を残しながら解散した基金の代表の方にお話を聞きに大阪に行ってきました。
 厚生年金基金は、昭和40年代頃に国の政策でもって推進されいろんな団体が設立したものです。従業員の給料からと会社負担分の掛け金を、本来国に払い込みするのを、基金が預かり運用していきます。その運用益と会社が上乗せしてる掛け金によって、通常の厚生年金よりも多くの年金がもらえるというのが本来の趣旨でした。この国に代わって運用することを代行と呼んでいます。
 株価が順調に上がっているときには代行運用も良く問題もなかったのですが、バブル崩壊後、運用が逆にマイナスになり資産が減っていく状態になってしまいました。一方国は、この預けてる資金をある運用益を見込んで増やしていく形となるので、さらにギャップが大きくなっていきます。例えば、100万円の資金が国の帳簿では105万円(5%運用)になってるのに、基金では80万円に減少して25万円の不足が生じる、という具合です。この場合には、25万円を基金が補填しなければ、基金を止めることができない訳です。
 また、タクシーのように従業員の平均年齢が高くなると、年金を掛ける人よりももらう人の方が多くなってしまいます。これを成熟度が増す、と言います。こうなると、年金の資産はどんどん減少することになります。
 今回の基金は、時限立法の「特例解散」という制度を使ってはじめて解散した事例でした。このまま行けば、5年後には資産がマイナスになるという悲惨な事例です。解散をするために、会社は従業員ひとりあたり数百万円(この額を想像できますか?大変な額です)の負債を一括または、分割で支払わなくてはなりません。
 基金という団体ですから、理事長を始めとした組織があります。ただ、この組織は何も悪いことをしていないのです。運用のスタイルについても、国内株が何割、国債が何割などと決められていましたので、まさに市場の悪化が原因なのです。成熟度の上昇も基金のせいではありません。
 基金は、国の政策として推進してきたものである筈なのに、全く国が責任を取ろうとしていません。今回の基金の事例では、これから先いつまで会社がもつものか、とても不安な状況です。どこかが倒産したら、その分は残りの会社が負担しなければならず、まさに連鎖倒産の危険性を孕んでいます。基金に対する国の対応は間違っていると、私は痛切に感じました。
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ホテルグランヴィア大阪より(朝の風景)
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