TOP > ニュース > 認知症患者の家族への賠償責任問題

メディア

認知症患者の家族への賠償責任問題

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
認知症患者の家族への賠償責任問題
愛知県大府市で2007年、自宅を出て徘徊中に電車にはねられて死亡した認知症患者の男性(当時91)の家族に、JR東海が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が今月24日、名古屋高裁でありました。男性の妻と長男に約720万円の賠償を命じた一審判決を変更、妻のみに約360万円の支払いを命じました。長男については、20年以上も別居生活を続けていたことで、賠償責任は認めませんでした。
 賠償額が半減したとは言え、認知症患者の急増が見込まれるなか、家族の責任を引き続き認めた司法判断は介護現場に影響を与えそうです。判決理由で裁判官は、当時85歳だった妻に関して「1945年の婚姻以降、同居して生活してきた夫婦。自立した生活を送れない男性を監督する義務があった」と述べたそうです。老々介護の現実を直視せず、従来通りの責任論で判断した判決とも言えます。永く自宅での生活を送れる環境にするためにも、せめて、裁判所は国の責任にも言及して欲しかったと思います。
 個人賠償責任保険という商品があり、私も入っていますが、この保険料はわずかな金額で、本人や同居の家族が賠償責任を負った場合に補償すると書いてあります。こんな保険でカバーできるものなら、認知症の家族を抱える人には、わずかな個人負担で強制的に入るような仕組みは作れないものでしょうか?この裁判事例をきっかけに、認知症に関わる人々が救われるような制度改正に向けて取り組んで欲しいものです。
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加