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八日目の蝉

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八日目の蝉
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「前に、死ねなかった蝉の話をしたの、あんた覚えてる?七日で死ぬよりも、八日目に生き残った蝉の方が悲しいって、あんたは言ったよね。私もずっとそう思ってたけど」千草は静かに言葉をつなぐ。「それは違うかもね。八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどにひどいものばかりでもないと、私は思うよ」
 “八日目の蝉”という映画を見て、角田光代作の単行本も読みました。冒頭の文章は、その中の1節から引用したものです。ある夫婦にできた赤ちゃんを、その主人と不倫して子をおろした女性が留守中に連れ出し、逃亡しながら自分の子として大事に育て、3年後くらいに逮捕されるという物語です。夫婦の家族も、逃亡した女性と子供も、通常ないような時を過ごすことになってしまい、“その後”をどうするのかという問いに、八日目の蝉を答えとしてもってきたのでしょう。いろいろあっても人は生きていかねばならない、できれば希望をもって、そういうメッセージなのでしょうか。
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