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ZOC運賃の分析~まとめ

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ZOC運賃の分析~まとめ
西日本新聞への意見具申により、下記のような「問い」を頂きました。私は、ブログで答えを書くとお返しして、このシリーズで説明しているつもりです。
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(西日本新聞より)さて、連載の最終回では、タクシー業界の「構造的限界」として、さまざまに指摘させていただきました。この点について私どもは、貞包さまのご意見を伺いたいと存じます。県タクシー協会の幹部として、現状を打開するためにどのような理念構想・具体策をお持ちでしょうか。MKのように露骨なシェア拡大の野望を掲げて価格競争を仕掛けてくる業者もあります。乗務員の待遇悪化、値上げと交通弱者である利用者の救済などを、この構造的布教に現状に鑑みて、地元業界としてどうお考えですか。
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まず、総論としては、タクシーは、鉄道、バスと並ぶ公共交通機関として、残念ながら「構造的限界」から抜け出すことは困難であります。タクシー会社など比較にならないほど、規模も大きくスタッフも揃っていて、交通工学あるいは交通経済学としても研究されてきた鉄道やバスでさえも、「構造的限界」から抜け出すことができたでしょうか?これは、国民が自家用車を選択したときから「勝負がついていた」のです。
 電車では、さまざまな車両の改良、ダイヤの研究、様々な料金の研究と実践をしてきましたが、それでも乗客減少の歯止めにはなっていません。バスでも、100円均一、フリーパス券などと、乗客を増やす努力はしていますが、収支の改善にはなっていません。
 「価格弾力性」というのは、値段を下げたときに下げた割合に対してどれくらい乗客数が伸びるかどうかを算出するものです。鉄道では、いくつか計算された事例がありますが、ほとんど0.5~0.7程度と、1を切っています。要するに、値段を半額にしても、乗客は倍にはならないということです。
 かといって、タクシーがどこまでも値上げを繰り返すことは間違いだと思います。ちょうどいいバランス点があるのかもしれません。しかし、乗客が増えた分、タクシーが増えていっては何にもなりません。イギリスなどの政策のように、車両数と値段とをセットで調整していかないと、いつまで経っても改善はできないと思います。
 タクシーが生き残る道を考えるとき、ポイントは4つあると考えています。
①運賃について、試行的な実験を繰り返して、ベストな選択をしていくべきです。時間距離併用運賃は、距離制のみの運賃にすべきだと私は思っています。刻み幅については、ZOCのように大きく取るのがいいとは思わず、どちらがいいのか十分研究する必要があります。割引制度については、新しい需要を生み出すものにターゲットを絞って開拓していくべきです。
②運行効率を上げるためには、どれだけ車両が速く走れるかがポイントになります。そういった意味では、(都市)高速道路でのタクシー車両への割引は、路線バス並みに導入してもらうよう、引き続き要望していくべきです。実車車両のバスレーンの走行も引き続き要望していくべきです。
③タクシーの運賃を確実に安くするためには、「乗り合い」を導入するしかありません。現在の道路運送方では禁じられていますが、合法的にできるような研究をしていく必要があります。
④環境問題への対処という意味でも、自家用車から公共交通機関へシフトを訴えていくべきです。そのためには、タクシー業界もそれを目的とした運賃の割引等も積極的に取り組んでいく必要があると思います。また、公共交通機関への社会的なコスト負担について、国民の理解を得ていく努力をしていくべきだと思います。
新聞やテレビなどの報道機関は、交通弱者の視点や環境問題への対応という課題をもっと勉強して、公共交通の維持・発展に向けて国民の意識を変えていくような役割を演じて欲しいものだと思います。
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