ZOC運賃の分析その3

Q「長い時間空車でいるタクシーであれば、半値でも1回走った方が得か?」
という問いかけにどう答えますか?
A「その1回が、本来なかった需要であれば得です。」というのが正確な答えです。
上の疑問には、多くの人が間違った解答を出すと思います。日中の暇な時間帯には、タクシーが30分も1時間も空車で待機しています。「どうせ1時間待つのなら、半額でも1回走った方が得だ。」と誰でも考えるでしょう。でも、その半額が他にも波及してしまうことになってしまっては、それも得にはならないのです。
―――
1時間あたりの売上が2,000円だとします。実車1kmあたりの単価は、初乗りが406円でそれ以後が266円なので、初乗りの占める割合によって変わってきますが、平均的に363円とすると、
2,000÷363=5.5kmということになります。実車率が40%ですから、1時間あたりの走行キロは、
5.5÷0.4=13.75km。
この距離を走るのにどれくらい時間がかかるかというと、タクシーの平均時速が30km/hとして、
13.75÷30×60=27.5分ということになります。
このことを示したのが図1です。
―――
ここからが本題です。お客様を増やそうと思って、運賃を半額にしたら収入が増えるかどうか考えてみます。運賃を半額にしたらどれくらいお客様が増えるかという前提が必要ですので、仮に2倍に増えると仮定しましょう。
タクシーの場合は、派生需要といってタクシーに乗ることが目的ではないので、安くなっても目的地は通常変わりません。単純に収入を考えると、2,000円の人が半額の1,000円になって、もう一人お客様が増えても、合計2,000円と変わりません。
停車時間がどうなるか。5.5km実車の人がもう一人増えるので、実車が11kmになります。上と同様に計算すると、走行が27.5kmとなり、走行時間が55分となり図2のようになります。
こうなると、問題は停車時間が5分になってしまい、55分間走り続けなければ成り立ちません。もうちょっと需要が増えても受け入れる余地がなくなるということです。
これ以上売上を上げるためには、もっと速く走るしかなくなります。おのずと強引な運転になってきてしまいます。

―――
冒頭の質問で、「暇な時間でもう1回走ろう」と思っても、値段を安くすることを広報しなくてはならないので、そうすると他の人にも安くしなければなりません。顧客との個別の値段交渉で安くするケースでも、その顧客は安くなくても乗らなくてはならない顧客であり、増えた顧客ではなく安くなるだけの効果しかありません。
本当に効果がある値下げとは、本来だったら乗らない客だけが安くなるやり方しかないのです。当社のタクシー定期券はそれを狙ったものですが、ZOCではそれは不可能です。