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事前確定運賃の詳しい解説

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事前確定運賃の詳しい解説

事前確定運賃とは?

事前確定運賃は、タクシーに乗車して「到着するまで料金がわからなくて不安」という従来からの課題に対して、やっと認められた制度です。関東運輸局で、初めて認可されたのが令和元年10月25日のことです。
具体的な利用方法は、配車アプリのダウンロードが必須で、下記の通りです。
① 利用したいタクシー事業者が使用する配車アプリをダウンロードし、利用者登録
② 配車アプリ内で、乗車地・降車地を設定
③ 配車アプリ内で、利用規約に同意の上、運賃を確定し、配車を依頼

事前確定運賃のしくみ

従来からのタクシー運賃は、“時間距離併用運賃”という制度で、タクシーメーターにて走行した距離に信号待ちや低速走行の時間を加味した運賃を算出したものです。わかりやすく言うと、渋滞や信号等で停止していたとしても、時速10キロメートルの速度で走行しているとして、メーターが上がっていくことになります。時速10キロメートル以下になることなく、目的地までついた場合には、理論的には距離制運賃と同じになります。
 事前確定運賃は、この時間距離併用運賃という現状の運賃に近づけるために、距離制運賃に地域毎、曜日毎、時間毎に決めた係数をかけたものになります。
例えば、東京での係数(本日現在の認可値)を見てみると、
月曜日 7時台1.20 8時台1.23 9時台1.27 ・・・
という感じになります。この係数は、国土交通省の各運輸局のHPには公示されていますが、利用者にわかるものではありません。最近のコロナ禍のような特殊な時代になっても、係数が見直される訳ではありませんので、場合によっては、お客様が損になる場合もあります。

何故、全国に広まらないか?

上記で述べましたように、地域毎、曜日毎、時間毎に係数を決める必要があるため、そういったデータを提出しないと認可できない仕組みになっています。私から言わせると、「わざとハードルを付けた」制度のように思えます。データを提出するためには、車両ごとに設置した運行記録計(導入している会社は少ない)か、配車アプリデータの蓄積(配車アプリも導入している会社は少ない)が必要になります。ですから、この事前確定運賃の認可を得ている会社は少ないのです。

事前確定運賃のあるべき姿

私は、数十年前から、タクシーに乗る上での不安を解消するために、事前確定運賃の必要性を唱えていましたが、距離制運賃での事前確定運賃に拘っていました。なぜなら、事前確定運賃を選択するインセンティブも必要だし、コロナ禍で道路が空いている時にメーターよりも高くなるような運賃はお客様をだますようでおかしいと思うからです。さらに言うと、高速道路での走行時はメーターを「支払」にする、すなわち時間制運賃を併用しないルールになっているのですが、今の事前確定運賃では明らかに係数分だけ高くなってしまうのです。こういったことは、お客様に事前に説明するべきものですが、そんなこともお構いなしの制度は、あまりにも稚拙と言わざるを得ません。
 私なら、単純に地図からの距離計算で算出した運賃であっていいと思います。そうすると、全国での適用もすぐにでき、多くの皆様にも便利になり、ひいてはタクシーの利用促進につながると考えます。

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